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2016-06-08

イスラエル紀行 Vol.8

ラジャイはそこにあったビーチパラソルを広げて木陰に椅子を置き、その上に荷物を置くと、私たちにとにかく死海に入るように言った。熱く焼ける砂から水の中に入るとようやくほっと一息。それもつかの間体のバランスが保てなくなっていく。足元の粘度が底なし沼のように足を吸い込んでいくのだ。

あつい、あつい、と言っていた本田さんも水に入って、少しなめて、しょっぱいと叫んでいた。しょっぱいどころか苦い。口元に飛んできた水しぶきを少しなめて、私はそう思った。騒がないで、リラックスして、水に腰掛けて、背中を下にして浮くんだ、と、ラジャイが言う。子供を保護する親のように、ラジャイは私の手をとって言った。大丈夫、僕はここにいる。リラックスして。

全身を水につけてしばらく浮いた。何もしなくても体は浮いてしまう。仰向きに浮いていると太陽の光がジリジリと顔を焼いた。不意にラジャイが私の手をとって引き寄せた。立ち上がるとラジャイは足元の泥を手に私の体に塗り始めた。上半身を丁寧に塗り終わった頃、本田さんが近づいてきた。ラジャイは泥の塊を本田さんの体にも塗りつけ、あとは自分でやれと言ってまた私に取り掛かった。水着の中まで手を入れて丁寧に丁寧に塗りつける。私の腹筋や胸筋を指摘し、いい体をしている、と言いながら、何度もなんども塗りつけた。世界中の何人の女性に僕はこうしてきたと思う?と、ラジャイが聞く。だが、私はそれどころではなかった。右目に泥が入ったらしく痛くて仕方なかったのだ。
それを告げるとラジャイはボトルの水で私の目を洗った。そしてまた、私の顔に満遍なく泥を塗りつけた。
全身に塗り終わると、しばらく太陽の下で立っているように言われた。足が熱くて立っていられないというと、どこかから誰かが置いていったビーチサンダルを探してきて私に履かせた。そして、もう一度水に戻ると、泥の塊を手にあがり、私に渡して、彼の背中に塗ってくれと言った。私はそれを満遍なく彼の背中に伸ばした。本田さんは、もうたくさん、と言って水に入り、泥を洗い流していた。
本田さんは新聞紙を用意してきていて、水に浮かんで晒される顔の上にその新聞を広げて日の光から目を守った。さすが、かしこいなあ!私に時間がかかっているのを申し訳なく思いつつ、リラックスして、というラジャイの言葉に私は従った。泥は乾いてひび割れてきた。もういいよ、水に入って、そう言われて私は水に入った。言われるがままに仰向けに水に浮かんで、彼の手が身体中の体の泥をゆっくりと剥がしていくのに身を任せた。ジリジリと太陽が顔を焼く。また日焼けするなあ、と思いながら、この太陽の光が私の中から風邪を追い出して欲しいと願った。
十分に泥を落とすと、私たちはまず海岸に設置されているシャワーで洗い、そしてシャワー室でもう一度洗い流した。どんなに落とそうと落ち切らないように思えたけれど、適当に切り上げて、外に出る。髪を乾かすドライヤーはないかというと、こんなに暑いのだからすぐに乾くよと笑われた。その足で私たちは昼食を取りにレストランへと向かった。
イスラエル紀行8-1
死海のビーチのシャワー。まずここで塩を洗い流す
イスラエル紀行8

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